アーカイブ | RSS |
投稿者 : kishimoto 投稿日時: 2011-02-08 01:04:19 (1330 ヒット)

東京地裁 平成2年10月26日判決

 区分所有者は、複数の区分所有関係の発生した時期、すなわち区分所有建物の譲渡により区分所有権が発生し、区分所有権の登記等により区分所有建物であることが客観的に認識される状態になった時から、法令、規約、集会で定めるところに従い管理費等の支払義務を負う。この時期に至ったならば分譲業者であっても未分譲の区分所有権を有する以上、管理費等を支払わねばならない。

 但し、未売却住戸の売主が管理費等を負担しない旨の「特約」は無効でない(=有効)とされた事例があるので注意。

 


投稿者 : kishimoto 投稿日時: 2010-12-07 00:54:40 (1313 ヒット)

東京地方裁判所 平成3年3月8日判決

共有壁面復旧工事等請求事件

1 事件のあらまし

 東京都内にある、昭和40年代に分譲されたマンションで-そのマンションは、壁そのものが柱と同様上部の構造物を支えている壁柱様式の建物です(その後集合住宅での構造計算の方式が変更されたため、現在ではこの壁柱様式の建物は建築されていません)-ある区分所有者・甲が、その壁柱にA、Bという2つの貫通孔を設けて給水・給湯管やガス管などを通し、壁柱にガスバランス釜(幅35cm、長さ50cm、厚さ10cm、重さ14.5kg)を取り付けました。
 そこで、管理組合では、甲に対し、再三配管類を撤去し、貫通孔を原状回復するよう要求したのですが、甲がこれに応じなかったため、提訴するに至ったわけです。
 管理組合は甲に対し、裁判で次の請求をしました。

(a) A、B、Cの貫通孔に通してある配線・配管を取り外し、この三個の穴をセメントで塞ぐ工事をすること(裁判の途中で、Cの貫通孔もあり、この穴は、甲ではなく元の区分所有者が開けたものであることが分かりましたが、管理組合は甲に対し、この穴の配管等の取り外しと原状回復も求めました。)。
(b) ガスバランス釜を撤去し、その釜設置のため開けたねじ穴をセメントで塞ぐ工事をすること。
(c) この訴訟をするについて、管理組合が負担した弁護士費用を支払うこと。

 管理組合がこのような請求をした法律的な根拠は、次のとおりです。

(1)上記(a)、(b)の請求に対して

 貫通孔の設置及びバランス釜の取付けは、壁柱の強度を弱め建物全体の強度に悪影響を及ぼし、あるいは少なくとも壁柱の強度を弱めることになるおそれがある。したがって、甲の行為は、建物の保存に有害な行為である。仮に、直ちに建物の保存に有害な行為とはいえないとしても、共用部分に区分所有者がそれぞれに独自の判断で変更を加えることが許されると、てんでんばらばらに建物の保存に有害な行為がなされるおそれがある。甲は管理組合の承認もなく勝手な判断で行ったのであり、貫通孔の設置などの行為は、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為である(区分所有法6条)。

(2)特に上記(a)のCの貫通孔について

 管理組合の管理者が、その業務を行うについて有する債権については、その区分所有者の特定承継人に対しても行うことができるから、Cの貫通孔は、例えば元の区分所有者が設置したものであっても、甲が原状回復義務を負う(区分所有法8条、7条1項)。

(3)上記(c)の請求に対して

 管理組合が訴訟のために負担した弁護士費用は、甲の貫通孔設置などの行為及び管理組合の原状回復の要求を拒否するという不法行為によって、管理組合が被った損害である。

 このような管理組合の主張に対し、甲は、次のように反論しました。

(1)に対して

 貫通孔は小さなもの(A、Bは直径6cm、Cは8cm)であるし、ダイヤモンドカッターを使用して慎重を期し、鉄筋を切断又はそれに損傷を加えていない。また、バランス釜は小型で壁柱にはほとんど負担がかからないから壁柱強度を弱めていないし、その強度に影響を及ぼす行為ではない。甲は、一級建築士で専門知識を有するので、特に慎重を期した。したがって、管理組合の請求は権利濫用である。

(2)に対して

 Cの貫通孔は甲が設けたものではないから原状回復の義務はない。

(3)に対して

 弁護士費用まで支払う必要がない。

 結局、事件の争点は、主に(1)に絞られた。

3 判決の内容

 裁判所は、管理組合の主張を全面的に認めて、上記(a)、(b)、(c)の請求を認める判決を下しました。
その内容は、次のとおりです。

  • 区分所有法57条によりその行為の結果の除去を求める行為は、建物の保存に有害な行為に限定されない。区分所有法17条1項は、共用部分の変更は、集会の特別多数決議で決すると定めており、たとえ各区分所有者が建築の専門家であっても、独自の判断により、共用部分に変更を加えることを認めていない。現実には建物に有害ではないとしても、共用部分に変更を加えること自体、有害となるおそれがあるため、建物の管理又は使用に関し共同の利益に反する行為ということができる(区分所有法6条1項)。
    甲の権利濫用の主張も、区分所有建物の保守維持のためには個人の判断による勝手な行動は許されず、集会の決議を経なければならないという原則は守られなければならず、現実の被害の有無は重要ではない。 
  • 元の所有者が設置した湯沸器が爆発するなどの故障があったとしても、甲の行為を正当化するものではない。甲は、風呂の使用には支障があることを知りながらマンションを購入したし、甲がバランス釜を設置する頃には、管理組合は、ガス会社から警報器とストッパーを取付ければ既存の湯沸器を継続使用してもよいとの回答を得、マンションの廊下側に新製品の器具を設置し廊下側に排気孔を設ければよいとの解決策も確認している。これらを各区分所有者に知らせたのに、甲は貫通孔の設置などを強行した。
  • 甲がバランス釜を設置するずっと以前から、リフォームが共用部分の変更にかかわる場合には、理事会の承認や集会の決議を得るためにこれを事前に届出る手続が行われていた。
    裁判所は、配管やバランス釜などの撤去と貫通孔を原状回復する点については、以上のような理由で管理組合の請求を認めたわけです。Cの貫通孔については、甲は区分所有法8条、7条1項により原状回復義務の承継を否定できないから、Cの穴を開けたのが甲か元の区分所有者かは結論に影響を及ぼさないという理由で、原状回復の請求を認めました。
    一方、弁護士費用については、格別に理由付けをしていませんが、管理組合が甲に対して請求した金額の全額の支払を命じました。
     

 


投稿者 : kishimoto 投稿日時: 2010-12-06 00:32:21 (2000 ヒット)

事件番号  平成19(ハ)28255
 件 名  管理費等
 裁判所   東京簡易裁判所 民事第5室
 裁判年月日  平成20年03月25日

主文

1 被告は,原告に対し,8609円を支払え。

2 被告は,原告に対し,2万6250円及びこれに対する平成20年1月7日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は被告の負担とする。

4 この判決は,1項及び2項に限り仮に執行することができる

第1 請     求   主文と同旨

第2 事案の概要

 1 請求の原因

   別紙記載のとおり

  (7) 平成20年2月4日,被告は原告に対し,31万2360円を支払ったので,原告は未払管理費等に充当した。

  (8) よって,原告は被告に対し,平成19年1月分から同年12月分までの未払管理費等の合計31万2360円に対する平成19年12月分の管理費等の支払期限(平成19年11月27日)の翌日である平成19年11月28日から平成20年2月4日までの年14.6パーセントの割合による確定遅延損害金として8609円及び弁護士費用として2万6250円及びこれに対する平成20年1月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払いを求める。

2 争点
  原告は被告に対し,原告の弁護士費用を請求できるかどうか。

  (原告の主張の要旨)
  原告の管理規約には違約金として弁護士費用を請求できると定められている。また国土交通省標準管理規約等においても同様の規定がある。これ らの規定は,建物の区分所有等に関する法律 (以下 「区分所有法」 という。)30条1項に定める「建物の管理に関する事項」であり,被告は本件以前にも管理費等の未払いを繰り返してきたのであるから,訴訟提起のために要した弁護士費用を負担させることは何ら不合理ではない。


  (被告の主張の要旨)
  我が国において敗訴者が弁護士費用を含めた訴訟費用を負担するという制度を取っておらず,法改正等で議論されているところである。従って,管理規約に弁護士費用を請求できる旨の記載があるとしても,その規定自体が違法なものであって,被告が負担すべきものではない。

  また,簡易裁判所の事案であり,原告は本人として訴訟をすることができるのであるから,本件請求は棄却されるべきである。


第3 当裁判所の判断

 1 請求原因事実のうち,1ないし4,5(1)及び7の事実については当事者間に争いがない。

  請求原因事実のうち,5(2)及び6の事実については,証拠によってこれを認めることができる。


 2 争点について
  (1) 証拠によれば,原告の管理規約62条2項には,管理組合は,区分所有者等が管理費等を納付しない場合には,未払管理費等に加えて,年14.6パーセント以内の約定の遅延損害金及び違約金としての弁護士費用を請求することができると記載されていることが認められる。

  (2) 敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させるかどうかについては,法制度上議論のあるところであり,今だ敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させる旨の法律が制定されていないことは,公知の事実である。しかし,現行法制上においても,敗訴者に相手方の弁護士費用を負担させる旨の合意等(本件規約を含む)を定めることは,一律に違法とまではいうべきではなく,既存の法律の趣旨,条項に違反しない限りは,その効力を認めるべきである。

  ところで,管理費等の未納者に対し,規約において違約金を定めることは,原告のようなマンション管理組合が区分所有であるマンションを管理運営する上で必要な事項であり,区分所有法30条1項に定める「建物の管理に関する事項」に該当するというべきである。

  そして,規約において,弁護士費用相当額を違約金として規定することについては,管理費等の未納者に対しその支払いを求める場合において,事案に応じて,その手続を弁護士に依頼する場合が想定され,弁護士に依頼をすれば相応の弁護士費用がかかることになり,その費用を違約金として規約に定めること自体は合理性があり,区分所有法の趣旨に反するものではないというべきである。

 また,本件では,被告は本件以前にも管理費等の未払いがあり,本件訴訟提起後においても管理費等の未払いの状態が一定期間続いていたこと,違約金として弁護士費用相当額が2万6250円であること等を考慮すると,弁護士に対して簡易裁判所へ本件の訴えを提起することを依頼したことについて不合理であるとの点は認められない。

  (3) よって,原告の主張は理由がある。

 3 その他,原告の請求を妨げるに足りる証拠もない。

 4 よって,原告の請求は理由があるので認容し,主文のとおり判決する。  


投稿者 : kishimoto 投稿日時: 2010-09-17 20:10:45 (1208 ヒット)

平成16年9月22日判決 福岡地裁 

マンションにおけるペット飼育に関して、売主である販売業者の説明義務違反及び不法行為責任が否定された事例。
 
(原告)分譲マンション購入者 (犬の飼い主)
(被告)不動産の売買及び仲介等を目的とする会社

(内容)原告が、被告に対し、被告が原告に対してマンションを販売する際、ペットの飼育に関して不適切な説明を行い、原告を同マンションでのペットの飼育が可能であると誤信させてその売買契約を締結させたとして、損害賠償または不当利得の返還を請求している事案である。
 

(判決)原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。


(理由)本件売買契約に関し、被告に債務不履行及び不法行為があったとは認められず、また、本件売買契約は有効に成立しており、原告による取消しも認められないから、被告は、原告に対し、損害賠償義務及び不当利得返還義務を負わない。 

(解説)
 飼育に関して明確な規約を持たない(曖昧規約)マンションにて。
一部の買い手には、「飼育可」また、他の買い手には「飼育不可」として販売していた売主に対して、「ペット可が条件」で購入したパグの飼い主が「飼育可である」「将来的に飼育を保障されている」と誤認させられた。そして、「被告がペットアレルギーの子供がいる家庭に隣家を売ったことで、大変な気遣いを必要とし、飼育が困難」と損害賠償を訴えたもの。

しかし、売主は「マンションでのペット飼育は禁止が常識。飼育可ならば<足洗い場>などの設備が設置されているものである。そもそも飼育の可否は管理組合で決めるもの」という主張。

 裁判所は このような「曖昧規約」において「現行管理組合規約等が改正されない限りペット飼育が不可能になるものではない」と原則を判断。
 「危害迷惑をかける行為に該当しない場合に限りペット飼育はは可能」とは売主は説明しており、これは「規約」の解釈を述べたのに過ぎない。よって、これに対しての説明義務違反はない。
 「重要事項説明」の中で、「管理規約」の変更は管理組合によって変更しうるものと記載があるので、売主は将来的な内容を確定的に説明する事は出来ない。したがって、制定予定の内容説明の義務を負うにとどまるとしています。
 また、原告が「犬を散歩のために室外に出す際には,できる限りエレベーターに乗らないようにしている。また、隣家にペットアレルギーを持つ子供がいるため、室内にいてもできるだけ窓を開けない、バルコニーの隣家寄り部分には洗濯物を干さない等の配慮をしている」と主張しているのに対し、「原告がアレルギーのある隣家に対しての配慮として行っていることは、ペットの飼育が可能なマンションであっても、当然に必要とされるものであるから、特段、原告のペットの飼育を困難にするものとはいえない」とも言っています。


投稿者 : kishimoto 投稿日時: 2010-09-17 19:56:24 (2141 ヒット)

平成19年6月28日判決 東京高裁

   (原審東京地裁 平成19年1月30日判決)

(争点)管理規約・使用規則における禁止項目、
「居住者に迷惑又は危害を及ぼすおそれのある動物を飼育すること(ただし、盲導犬・聴導犬・介護犬・及び室内のみで飼育できる小鳥・観賞魚を除く。)」との規定は、一般の犬猫飼育を全面禁止したものかの解釈。

(裁判所判断)「盲導犬…等を除く」との文言の通常の意味を勘案するとともに、規約や規則の解釈については、「マンションの区部所有者全員から構成される団体である管理組合の総会決議によって設定された規則であるから、その団体自治による規則としての性質に鑑み、その解釈に当たっては、管理組合においてこれまでどのような解釈が採られてていたかを尊重すべきであると考える」とし、過去の総会での議論などの経緯等を精査した上で、盲導犬等以外の犬猫は居住者に迷惑又は危害を及ぼす恐れのある動物に含まれると判断する。

 単に「曖昧規約」の規定の文言だけで「犬猫飼育禁止規約」であるとするのではなく、その規定に基づき従前にその管理組合でどのように取り扱われていたかが重要である、と裁判所が判断している点がポイント。


« 1 (2)